レポート
2024.12.03

わたしと海の彩りの記憶

私は生まれ育った埼玉県熊谷市が大好きだ。

 

とにかく平らで海も山もないけど、程よい田舎で過ごしやすい。

2019年にコミュニティFM局「FMクマガヤ」でパーソナリティーとして活動を始めてからは、以前よりたくさんの素敵なお店や暖かい人たちとの出会いがあり、ますます地元が大好きになった。

ただこうやって、地元に満足してしまっているからか、どこかに出かけたいという気持ちがほぼない。

ただでさえ少なかった旅行に行く機会も、コロナ禍からはぐんと減った。

 

そんな私なのだけれど、海の記憶を辿ってみると思いのほかいろいろな海に行っていることに気がつき驚いた。そして訪れた時の景色や感情が鮮やかに思い出される。

 

一番古い海の記憶は、小学生の夏休みに家族で訪れた千葉の海だ。たしか台風が接近していて少し寒くて、灰色の空と少し荒れた暗い海。そんな中でも初めての海にはしゃぎ、砂浜で貝を拾い集めた。曇天の海には薄ピンクや淡い黄色のきれいな貝の色が隠れていて、宝石みたいに輝いて見えた。

ハワイの海

中学生の時に家族で訪れたハワイの海は、対照的な美しさだった。

到着後ホテルの窓から見たのは、白い砂浜と青い空、そしてエメラルドグリーンの海。本やテレビの中でしか見た事のない光景が目の前いっぱいに広がっていて圧倒された。透き通る海で夢中でシュノーケルをして、背中が真っ赤に日焼けしてうつ伏せで眠った。

海での新しい彩りやわくわくした感情との出会い

大人になり友人たちと九十九里浜でボディーボードに挑戦した時、波に乗る高揚感と気持ちよさを知った。

仕事でフィリピンに訪れた時、セブ島の海のあまりのカラフルさに驚いた。

ハマスタでナイター観戦をした後、チームの勝利に浮かれながらほろ酔いでキラキラした夜景と真っ黒な夜の海を眺めた。

他にもいろいろな海で新しい彩りやわくわくした感情との出会いがあった。

忘れられない海

ただ、明るい思い出ばかりではなく、こんな忘れられない海もある

セカンドオピニオンを受けた病院で、傷めた足が怪我ではなく病気かもしれないと告げられた日。

最初に診断を受けた病院では通っても悪化する一方で、その日にはすでに両足首から下がぱんぱんに腫れ、歩けず仕事にも行けず家で寝たきりの状態だった。弱っていた心にダメ押しされたかのような出来事で、付き添ってくれた友人の車の中で泣きながら弱音を吐いた。

そんな私に友人は「少しドライブに行こうか」と。

 

泣きつかれたころに着いた先は、茅ヶ崎の海だった。久しぶりに嗅ぐ潮の香り、波の音。

傾いた陽がオレンジ色の夕焼けに変わり沈んでいく間、友人は「がんばれ」でも「大丈夫」でもなく、ただただ一緒に砂浜に座って海を眺めてくれた。波の音と夕焼けの中、その出来事はどれだけ私を癒し励ましてくれたか。

 

完治した後、もう一度友人とその海を訪れた。

 

同じ景色なのに違って見え、あの時のことは夢だったかのような不思議な気持ちになったのも忘れられない思い出だ。

 

こうして振り返ってみると、海はいつも色とりどりの思い出や様々な感情に包まれている。

日常にはない海だからこそ、普段は出かける事が少ない私だからこそ「海」というだけで印象深く、特別なのかもしれない。

これから先、私はどんな海でどんな彩りや感情と出会うのだろうと思うと、少しだけ「出かけてみようかな」という気持ちが芽生えてきたことに気が付くのだった。

レポーター紹介

蓮沼千尋

FMクマガヤパーソナリティ
キッズダンス講師
リラクゼーションセラピスト

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