20代後半に入社したのは、海上運送の会社だった。
その貨物船は、LPGタンカー。液化石油ガスの巨大なタンカーである。
海のない埼玉に生まれ育ち、乗船といえば遊覧船くらいしか経験のない私にとって、そのスケールは想像するのみだった。
だがある時、目の当たりにできる滅多にないチャンスがおとずれた。
新しい船が造られ船名の募集があり、採用されると進水式に出席できる。進水式とは、新しい船を初めて水に触れさせる作業であり大変華やかな儀式でもある。
会社が所有していたのは外国籍で、すべて星にちなんだ名前がつけられていた。自分の名付けた船が航海する姿を想像しながら、まさに星の数ほどある星の名前から、ひとつを決め応募した。
採用されたのは別の星だった。
私のもいい名前だったのにと、いまだに思う。
だがそれでよかったとも、いまは思う。
私が名付けたかったのは「CORONA」。かんむり座の一部からとったものだったが、偶然にもギリシャ語のCORONAと同じであり猛威をふるった感染症の呼び名となってしまった。いろいろ想像するとなんともいたたまれない気持ちであります…
そんなこともあり、停泊するタンカーを目にするとその名前にも思いを馳せるのが私にとっての海。その先の大海原を行き交う姿もいまだ想像の域。
いろいろ想像できるのが、海が身近にない埼玉のよいところ、だよねー。
FMクマガヤパーソナリティ